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Discover

#10

海と人が育む 優しい環
(1/4)

  • 伊勢志摩国立公園
  • 島っ子ガイド
  • 菅島

撮影:木本日菜乃
文:櫻井 卓

島っ子たちから旅の本質を学ぶ

鳥羽から出ている定期船に揺られること15分。船はあっという間に管島の港に到着した。
こぢんまりとした漁港があり、海から駆け上がる斜面に沿って家々が密集している。日本の原風景のような景色にほっとする気持ちはあるけれど、おそらく観光地としてたくさんの人が押し寄せるような場所ではない。ここを訪れたのは、すでに港で待ってくれていた島の子たちに会うのが目的だった。揃いのTシャツで「ようこそ、菅島へ」という手作りボードを掲げた島っ子たち。菅島小学校の全校生徒17人。今日のガイドは彼らだ。

菅島小学校と地元のガイド会社である「海島遊民くらぶ」が協力して生まれた島っ子ガイドという取り組み。これは「あまり人が来ない島だから、子供たちが外に出たときに、うまくコミュニケーションを取れるのかが心配」という島の大人たちの声がきっかけで生まれた。特別授業として、島の外から来る人に対して、島の魅力を伝える発表をおこなうというものだ。年に一度、島外の人と一緒に島を歩きながら島っ子がガイドしてくれる、島っ子ガイドフェスティバルも開催されていて毎年大人気だという。

元気な声が体育館に響く。この日はあいにくの雨。予定されていたリハーサルは、本来なら実際に島を巡りながらおこなうのだが、今日は体育館で行われるという。
島っ子たちの発表が実に楽しい。
地元のお祭りの話、海女さんの道具について、このあたりで釣ることが出来る魚の菅島弁での呼び名、どこの海苔がおすすめか、島っ子の間でどんな遊びが流行っているかなど、それこそネットで検索してもぜったいに出てこない地元の話。普通の旅行では知り得ないことばかりだ。
実際にその場に足を運ぶことの大切さ。現地にいかないと知ることができないことがたくさんあるという、旅の原点をも思い出させてもらった。「ここの浜でよく釣りをするのは誰でしょうか?」という島っ子クイズには思わず笑みがもれたけれど。

発表が終わると、島っ子たちがわらわらと寄ってくる。人なつっこいという表現がぴったりで、人との距離が近い。
「私が1番見たいのは、アフリカにいるクラゲなんだよ!」
菅島近辺のクラゲを紹介してくれたクラゲ博士がぐいぐい来る。もともとコミュニケーション能力を高めるためにはじまったというこのプロジェクトだが、この島っ子たちの好奇心を見ると、どうやらとてもうまく行っている。

発表後には、プロガイドである兵頭さんが、「ここをこうしたらもっと魅力的に伝わると思うよ」など、ひとりひとりに丁寧にアドバイスをしている。この経験はきっと大きくなってからも役に立つはずだ。そして、コミュニケーション能力だけでなく、地元を誇る心も育ててくれるだろう。そもそも島っ子たちが住むこの菅島は、国が認めた国立公園なのだから。

People

取材に協力してくれた人たち

海島遊民くらぶ

兵頭智穂(左)/田中希枝(右)

島っ子ガイドに協力している鳥羽のガイド会社の2人。伊勢志摩エリアの自然や食を体験できるツアーを多数おこなっている。島っ子ガイドフェスティバルは毎年11月上旬頃におこなわれる。