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Discover

#10

海と人が育む優しい環
(4/4)

  • リジェネラティブ
  • 伊勢志摩国立公園
  • 新しい取り組み

撮影:木本日菜乃
文:櫻井 卓

ゴミを知れば世界が変わる

「これがブイ、こっちは志摩の真珠養殖で使っていたカゴですね」
これらすべてが材料になるという。田中翔貴さんがCPOを勤める「リマーレ」は、海洋プラスチックごみをリサイクルする会社だ。
粉砕してからフレーク状にして、独自開発した特殊なプレス機で熱圧縮して板状にする。海外ではだいぶ普及してきている技術だが、日本ではまだリマーレ一社のみだ。出来上がった板材を切削加工することで、さまざまな形状のものに生まれ変わらせることができる。
漁具をメインの素材にしたのは、単純に量が多いからだという。たしかに、漁港などを歩くと使われなくなったブイなどが放置されているのをよく見かける。

「漁具だとどうしても黒がメインになってしまうので、アクセント的に色を入れたりいろいろ工夫をしてます」

漁具100%で出来たテーブルは、紫外線で劣化した部分が良いアクセントになっていて、元廃棄物という印象は受けない。むしろ独自の表情を持った新素材として捉えるべきかもしれない。このテーブルは東京のアート展にも出品されたという。

その他に、実験的なこともおこなっている。
リマーレの特徴的なところは、単一素材じゃなくてもプレート化できるところだ。
ペットボトルは、蓋とラベルを取り払ってからリサイクルゴミとして出す。これは異なる素材が混ざるとリサイクル費用が上がり、質にも影響してしまうためだ。

「うちの最大の特徴は、まさにそこで、ごちゃまぜになってしまっているものをリサイクルできるんです」

だから材料も海洋プラスチックごみにかぎらない。
目に入るすべてのプラスチック製品が対象になってくる。
最近取り組んでいるのはプラスチックとアルミの複合材。たとえば、飴の包装紙や薬のシート、いわゆるPTP包装と言われるものだ。これらを分離するのにはかなりコストがかかるため、リサイクル素材としては目を向けられていなかった。だが、リマーレではこれをダイレクトに粉砕、熱圧縮することで板状にすることに成功しているのだ。

そうしたゴミたちを素材に作ったプレートを利用して、家具をはじめ、さまざまなプロダクトも作っているが、いずれも「これが元ゴミ?」という独特で美しい質感を持っている。偶然性が生み出す柄も楽しい。ちなみにプロダクトになった状態のものを再び粉砕して、違うものに生まれ変わらせることもできる。永遠のループだ。

リマーレの取材を終えた後だと、プラスチックを目にするたびに、あれも循環できる? これもいける? という思考になる。要は世界の見方が変わってくる。
国立公園の看板などに海洋ゴミをリサイクルしたプレートを活用するのも、メッセージ性があって良いのではないか。ゴミがゴミにならない世界への可能性。これも人が作り出す素敵な環だ。

取材最終日、予定にはなかったが再び菅島へ。晴れの島を見てみたくなったのだ。
雨で行けなかった島っ子たちの発表の場所を回ってみる。
発表で出てきた灯台、ごっこ遊びをするという浜辺、よく釣れるという堤防。人の環に触れたことで、それまで縁もゆかりもなかった土地なのに、ただいまという感覚がある。
日本屈指のリアス海岸などの景観的美しさはもちろんだが、この旅で一番の収穫は、素晴らしい人たちが生む輪がたくさん見つかったことだ。
島っ子の発表にも出てきた杉田商店のコロッケを食べながら港へと戻る。
校舎からは、島っ子たちが授業を受ける元気な声が響いてくる。

People

取材に協力してくれた人たち

リマーレ

田中 翔貴

コストがあわないため、リサイクルが難しいとされている複合プラスチックを粉砕しプレスすることで新たな材料へと生まれ変わらせている会社。将来的には建材としての活用法なども視野に入れている。