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Discover

#2

ダイナミックな風景に
地球の生い立ちを見る
(2/2)

  • 伊豆大島
  • 再生の一本道
  • 富士箱根伊豆国立公園

撮影:木本日菜乃
文:櫻井 卓

砂漠から森へ。
再生を体感できる場所

黒い地面を踏みしめるたびに、ざくざくと小気味よい音がする。
日本で唯一、地図上で「砂漠」と表記される場所、裏砂漠で朝日を眺めた後、大島温泉ホテルの方面へと足を向ける。
しばらく歩くと足元に小さな植物が見えはじめる。イタドリという名の、先駆植物と呼ばれる植物たちで、固まった溶岩の上という悪条件のもとでも芽吹き、育つ。そういった先駆植物が落とした葉が、栄養となり、ススキが育ち、さらのその葉がさらに他の植物の養分となり……、という具合に、植物たちが生命のリレーをすることで、一面の砂漠だった場所が緑豊かな場所へと変わっていく。

その様子を、顕著に見ることができるのがこの「再生の一本道」と呼ばれる場所だ。
噴火の影響でゼロリセットされ、砂漠になった時期がグラデーションになっているので、歩を進めていくごとに、黒い大地に緑が再生していく。植物の密度が増え、背丈も高くなってくる。砂漠から森が形成されていく様子を、歩きながら実感として得ることができる。
そして最終的には木漏れ日あふれる緑のアーチへ。
この変化には中嶋さんも驚きを隠せない様子で、さきほどから、再生から砂漠へ、砂漠から再生へと、一本道を行ったりきたりしている。
「地質のことはある程度分かっていましたが、こういう植生についてははじめて知ることばかり。実は6年前にも大島に来たことがあるんですが、その時とはまるで別の世界を見ている気分です」

静かだけれど、変化に富んだ景色たち。
この旅で目にしたすべての変化は、目に見えて動いているような種類のものではないし、ともすれば見落としてしまいそうな小さなものも多い。
だが、自分が動き、つぶさに観察し、知ることで、悠久の地球の動きを追体験できるのが大島という場所だ。

今回訪れたのはけっして特別な場所ではない。ほとんどの場所は船着場にある観光案内の看板にも載っている。でも、今回粕谷さんというガイドの目線を借りながら巡ることで、地質はもちろん、植生や歴史など、包括的に知ることができ、旅がより広く、深くなった実感がある。

大島に別れを告げ、高速船に乗ってひと眠りしたら、窓の外には立ち並ぶビル群の姿が。
悠久を感じる土地から、あっという間に都会の喧噪へ。このギャップも大島旅の魅力のひとつなのかもしれない。
いつもだったら興ざめする旅の後の都会の景色も、地球の深淵をちょっとだけ覗いたいまなら、肯定的に捉えることができそうだ。

People

取材に協力してくれた人たち

オレンジフィッシュ

粕谷浩之

ダイビングショップ「オレンジフィッシュ」の代表。ジオパーク認定のジオガイドとしての顔も持ち、伊豆大島の貴重な地質的見どころについてもガイディングをおこなっている。伊豆大島の山、海両方の魅力を次世代に繋ぐべく、自然教育も積極的に行っている。

フリークライマー、 ザ・ノース・フェイス アスリート 

中嶋 徹

長野県出身。父の影響で幼少期からクライミングをはじめ、外岩において、さまざまな最年少記録を更新。海外への遠征も積極的におこなっており、直近ではフィンランドにある世界でもっとも難しく、最も孤独な課題とわれている「Burden of Dreams 9A(V17)」というボルダーに挑戦中。精力的に世界的なクライミングを行う一方で、地質の研究者としても活躍中でヒマラヤなどでもフィールドワークを行っている。